AIエージェントとは?仕組みと種類、自動決済等の未来について徹底解説

AIエージェントとは何かを解説している記事のアイキャッチ画像

「AIエージェント」という言葉をご存じですか?

単なるプログラムを超え、まるで意思を持っている「エージェント」かのようにタスクをこなすその姿は、近未来のSFのようで目を離せません。

この記事では、その魔法のような動きの裏側にある技術的な心臓部、すなわちAIエージェントが「どのように世界を認識し、考え、そして行動するのか」という根本的な仕組みを、AIの専門家が分かりやすく解き明かします。また、その未来の展望までを深く掘り下げていきます。この記事を読み終える頃には、AIエージェントの技術的な本質を理解し、その無限の可能性をよりクリアにイメージできていると嬉しいです。

AIエージェントとは – 自律的に思考し、行動する新しいAI

まず、AIエージェントがどのような存在なのか、その定義と、混同されがちな他のAI技術との違いから見ていきましょう。

AIエージェントの定義

AIエージェントとは何かを表すイメージ図

AIエージェントとは、特定の目標を達成するために、自らが置かれた状況を認識し、自律的に計画を立て、判断・行動する能力を持つAIプログラムです。重要なのは「自律性」です。人間が一つ一つの手順を細かく指示するのではなく、「〇〇を達成して」という抽象的な目標を与えるだけで、エージェント自身が最適な行動計画を立て、実行に移します。

この能力により、AIエージェントは単なるツールではなく、私たちの代理人(Agent)として、複雑なタスクを遂行するパートナーのような存在となり得るのです。

AIアシスタントやチャットボットとの決定的な違い

AIエージェントと、Siriのような「AIアシスタント」やWebサイトの「チャットボット」との間には、明確な違いがあります。

ツールの種類イメージ図ツールの内容
チャットボット主に顧客対応に特化し、決められたルールやFAQに基づいて一定の応答をする。
AIアシスタント「今日の天気は?」などといった簡単な指示に対し、情報を検索して答えを返すなど、「単一のタスク」を実行する。
AIエージェントAIエージェントとChatbotの違い「来週の大阪出張を手配して」などといった「目標」に対し、フライト検索、ホテル予約、カレンダー登録といった複数のタスクを自律的に計画し、連携させて実行する。

この「目標達成のための計画性と行動力」こそが、AIエージェントを際立たせる最大の特徴です。

AIエージェントを動かす中心:LLMの設計とReAct

さて、AIエージェントはどのようなシステムで働いているのでしょうか?

AIエージェントがPDCAサイクルを回すことができることを示した画像

AIエージェントの頭脳(LLM=Large Language Model)は、人間が何かのプロジェクトを実行する際に利用するPDCAサイクル(Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)と同じものを自律的に回すことができます。

Plan (計画)

  • 目標の理解とタスク分解: 与えられた抽象的な目標(例:「出張を手配して」)を理解し、達成に必要な具体的なステップへと分解します 。
  • 行動計画の策定: 分解した各ステップを実行するために、どのツール(API、データベース検索など)を、どのような順番で使うべきかの計画を立てます 。
  • 結果の予測: 行動がどのような結果をもたらすかを、内部に持つモデル(知識)を基に予測し、最適な計画を選択します 。

Do (実行)

  • ツールの使用: 計画に基づいて、APIの実行やデータベースへのアクセスなど、定義された「ツール」を実際に使用してタスクを遂行します 。
  • 環境への働きかけ: ツールを通じて、デジタル環境(Webサイトの操作、ファイルの生成など)あるいは物理環境(ロボットアームの操作など)に直接働きかけ、行動を起こします 。

Check (評価)

  • 結果の観測: 実行した行動の結果や、外部ツールからの返り値を観測(認知)し、計画通りに進んでいるかを確認します 。
  • 自己評価と進捗確認: 行動の結果が目標達成に貢献したか、あるいはエラーが発生していないかを評価し、目標までの進捗状況を判断します。

Act (改善)

  • 計画の修正: 予期せぬ結果やエラーが発生した場合、当初の計画をリアルタイムで修正し、別のツールを使ったり、別のアプローチを試したりします。
  • 経験からの学習: 成功・失敗の経験をメモリに蓄積し、次回の計画立案時により精度の高い、効率的な行動を選択できるように自己改善します 。

AIエージェントでは、このPDCAサイクルは、主に「ReAct(Reason and Act)」と呼ばれる思考パターンに基づいて設計されます(下図)。

AIエージェントの仕組みを示す図

(Chat botにReActパターンを導入して推論力を強化してみた! -Ramble を参考に図を作成)

タスクを分解し、実行中にReason(理由づけ)とAct(実行)のサイクルを自律的に繰り返すこの構造は、品質向上やミスの防止につながります。

また、AIエージェントには、RAG(=特別にアクセスすることのできる知識)API連携(=他サービスと連携して実務を行う能力)をカスタマイズして持たせることができます。例えば、企業のメール自動送信AIエージェントを作るには、企業固有の情報のファイルの閲覧権限やメールへのログイン権限を渡し、特定の指示に従ってメールを送信する能力を与えます。

AIエージェントの仕組みを示す画像

他にも、複雑な環境下で様々なタスクを行うにあたって、人間や他のAIエージェントなど他人と連携して行動する協調能力を備えていることもあります。

AIエージェントが自動決済も|最新動向と未来の展望

AIエージェント決済のイメージ図

AIエージェントの技術は今も進化を続けており、その可能性をさらに広げる新しい概念が登場しています。

複数のエージェントが協調する「マルチエージェントシステム」

単体のエージェントだけでなく、それぞれが専門性を持つ複数のAIエージェントが、互いにコミュニケーションを取りながら協調して、より大きな問題を解決する「マルチエージェントシステム」の研究が進んでいます。これは、人間が会社という組織を作って分業するのに似ています。例えば、リサーチ担当エージェント、分析担当エージェント、レポート作成担当エージェントが連携して、一つの市場調査レポートを完成させる、といったことが可能になります。

自律的な経済活動の始まり:「Agent Payments Protocol (AP2)」の衝撃

AIエージェントの行動範囲を劇的に広げる可能性を持つのが、Google社が2025年9月24日に発表した「Agent Payments Protocol (AP2)」です。これは、AIエージェントが人間の承認なしに、自律的かつ安全に決済を行えるようにするための技術的なルールの構想です。

この仕組みが実現すれば、AIエージェントは単に情報を処理するだけでなく、人が決めた予算の範囲内でサービスを契約したり、物品を購入したりといった経済活動の主体となり得ます。例えば、工場のAIエージェントが部品の消耗を検知し、最もコストパフォーマンスの良いサプライヤーを探し出して自動で発注・決済を行う、といった真の自律的なサプライチェーン管理が現実のものとなるでしょう。

(※情報は2025年10月14日時点のものです。)

まとめ:AIエージェントの仕組みを理解し、未来を見通す

この記事では、AIエージェントがどのようにして自律的に思考し、行動するのか、その中心的な「仕組み」について詳しく解説しました。

  • AIエージェントの本質: 単なるプログラムではなく、環境を認知し、目標達成のために推論し、ツールを使って行動する自律的な存在です。
  • 思考の源泉: この「認知・推論・行動」のサイクルが、AIエージェントのインテリジェンスの核をなしています。
  • 能力の多様性: 推論エンジンの設計によって、単純な反射行動から、経験を通じて自らを賢くする学習能力まで、様々なレベルのエージェントが存在します。
  • 未来の展望: 複数のエージェントが協調したり、決済能力を持って経済活動に参加したりと、その活躍の場はますます広がっていくことが予想されます。

AIエージェントの仕組みを理解することは、今後のテクノロジーの進化と、それに伴う社会の変化を深く見通すための鍵となります。この技術が私たちの未来をどのように形作っていくのか、引き続き注目していく必要があるでしょう。

AIエージェント関連の自社サービスを紹介する画像

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