「最近よく耳にするAIエージェント。自社にどう活かせるのだろうか」
「AIエージェントを開発したいが、何から手をつければ良いかわからない…」
このような疑問や悩みを抱えていませんか。生成AIの進化に伴い、自律的にタスクを実行するAIエージェントは、ビジネスの生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めており、多くの企業がその導入を検討し始めています。
この記事では、AIエージェントの基本から、開発に必要な技術、具体的な開発ステップ、さらには費用感まで、全体像を包括的に解説いたします。AIエージェントの仕組みについて詳しく書いた記事もございますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
この記事を読み終える頃には、AIエージェント開発に関する漠然とした不安が解消され、自社で導入を進めるための具体的な道筋が見えている状態になっていると嬉しいです。
目次
AIエージェントとは? 基本構造と注目の背景

AIエージェントとは、人間のように状況を認識・判断し、目標達成のために自律的に行動するAIのことです。従来の、決められた命令をこなすだけのプログラムとは一線を画し、与えられた目的に向かって自ら計画を立て、ツールを使いこなし、タスクを遂行する能力を持ちます。
なぜ今、AIエージェントが注目されるのか
AIエージェントが急速に注目を集めている最大の理由は、大規模言語モデル(LLM)の驚異的な進化にあります。人間のように自然な対話ができるLLMが「頭脳」の役割を担うことで、AIは単に情報を提供するだけでなく、複雑な指示を理解し、多段階のタスクを計画・実行する能力を獲得しました。

実際に、世界のAI市場は急速な成長が見込まれており、調査会社Grand View Researchの報告によれば、その市場規模は2023年の2792億2000万米ドルから、2033年には3兆4972億6000万米ドルに達すると予測されています。この成長の大きな要因の一つが、AIエージェントのような新たな技術の台頭です。
参照元:Artificial Intelligence Market (2025 – 2033)
AIエージェントの基本的な仕組み
AIエージェントは、主に以下の4つのステップを自律的に繰り返しながら動作します。
- 思考(Thought): 与えられた目標を達成するために、次に何をすべきかを考え、行動計画を立てます。
- ツール選択(Action): 計画を実行するために、利用可能なツール(例:Web検索、データベースアクセス、計算機など)の中から最適なものを選択します。
- 実行(Execution): 選択したツールを実行し、具体的な操作を行います。
- 観察(Observation): ツールの実行結果を観察し、目標達成に近づいたか、あるいは新たな情報が得られたかを確認します。この結果を元に、再び「思考」のステップに戻ります。
このサイクルを繰り返すことによって、AIエージェントは複雑なタスクを段階的に解決します。AIエージェントの仕組みについてさらに詳しく書いた記事もございますので、詳しくはこちらをご覧ください。
AIエージェント開発に不可欠な主要技術
AIエージェントは、いくつかの先進的な技術を組み合わせることで実現されています。ここでは、特に重要となる3つの技術について解説します。

頭脳を司る「大規模言語モデル(LLM)」
LLMは、AIエージェントの中核をなす「頭脳」です。人間の言葉を理解し、論理的な思考や計画立案、文章生成など、高度な知的作業を担います。どのLLMを選択するかによって、AIエージェントの性能が大きく左右されるため、目的に応じて最適なモデル(例: GPT-4、 Claude 3など)を選定することが重要です。
外部知識を活用する「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」
RAGは「検索拡張生成」と訳され、AIエージェントが最新情報や社内データといった外部の専門知識を参照できるようにするための技術です。LLMが元々持っている知識だけでは、情報が古かったり、社外秘のデータに対応できなかったりする場合があります。RAGは、こうした外部の知識をリアルタイムで検索し、その情報を基に回答を生成することで、より正確で信頼性の高い応答を可能にします(この技術は、LLMの弱点である「ハルシネーション」と呼ばれる、もっともらしい嘘をつく現象を抑制する効果もあります)。
外部ツールと連携する「API連携」
AIエージェントが真に価値を発揮するためには、様々な外部システムやツールと連携し、実際に「行動」を起こす能力が不可欠です。例えば、顧客情報をCRM(顧客関係管理システム)から取得したり、経費精算システムにデータを入力したり、メールを送信したりといった操作です。これを実現するのがAPI(Application Programming Interface)連携であり、APIを通じて外部サービスを操作することで、AIエージェントは単なる対話相手から、業務を代行する有能なアシスタントへと進化します。
AIエージェント開発の全体像|企画から運用までの5ステップ
AIエージェントの開発は、一般的に以下の5つのステップで進められます。全体の流れを把握することで、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。

STEP1:企画・要件定義
- 目的の明確化: 「何のためにAIエージェントを導入するのか」「どの業務課題を解決したいのか」を具体的に定義します。例えば、「問い合わせ対応の工数を30%削減する」「営業担当者の資料作成時間を半減させる」といった数値目標を設定します。
- スコープの決定: AIエージェントに任せる業務の範囲を明確にします。対応する問い合わせの種類、利用するデータ、連携するシステムなどを具体的に洗い出します。
STEP2:設計
- システム構成の設計: どのLLMを使用し、どのような外部データ(RAG)やツール(API)と連携させるかなど、技術的な構成を設計します。
- 対話フローの設計: ユーザーとの対話の流れや、AIエージェントの振る舞い(ペルソナ)を設計します。エラーが発生した場合の対処法などもここで決めておきます。
STEP3:開発・学習
- プロトタイプ開発: 設計に基づいて、小規模な試作品(プロトタイプ)を開発します。ここで基本的な動作を確認し、技術的な課題を洗い出します。
- データ連携・学習: RAGで参照させる社内マニュアルやデータベース、APIで連携する外部システムとの接続部分を実装します。必要に応じて、特定の業務に特化した知識を追加で学習させます。
STEP4:テスト
- 精度・動作検証: 想定される様々なシナリオでテストを行い、AIエージェントが意図通りに動作するか、回答の精度は十分かを確認します。
- ユーザーテスト: 実際に業務で利用する従業員に試用してもらい、使いやすさや業務改善効果についてフィードバックを収集します。
STEP5:運用・改善
- 本番導入・効果測定: テストで得られたフィードバックを元に修正を行い、実務への導入を開始します。導入後は、事前に設定したKPI(重要業績評価指標)を元に効果を測定します。
- 継続的な改善: ユーザーからのフィードバックや利用ログを分析し、定期的にAIエージェントの性能改善や機能追加を行っていきます。AIエージェントは「作って終わり」ではなく、「育てていく」ことが重要です。
AIエージェント開発を加速させる代表的なフレームワーク
AIエージェントをゼロから開発するのは非常に大変ですが、便利な開発ツール(フレームワーク)を活用することで、開発効率を大幅に向上させることができます。ここでは、代表的な2つのフレームワークをご紹介します。
LangChain
LangChainは、LLMを活用したアプリケーション開発のための最もポピュラーなフレームワークの一つです。AIエージェントの基本構造や、様々なツールとの連携機能などが予め部品(コンポーネント)として用意されており、それらを組み合わせることで比較的容易にAIエージェントを構築できます。
参照元:LangChain公式サイト(https://www.langchain.com/)
LlamaIndex
LlamaIndexは、特にRAGの機能に特化したフレームワークです。PDF、Word、PowerPointといった多様な形式の社内ドキュメントを効率的にLLMに連携させるための機能が豊富に用意されています。自社の独自データを活用したAIエージェントを開発する際に非常に強力なツールとなります。
参照元:LlamaIndex公式サイト(https://www.llamaindex.ai/)
AIエージェントの活用方法3選
AIエージェントは、様々な業務領域でその価値を発揮します。ここでは、代表的な3つの活用方法をご紹介します。

- 営業支援
顧客との商談履歴や過去の提案書データを学習したAIエージェントが、顧客に合わせた提案書のドラフトを自動で作成したり、商談の議事録を要約してCRMに自動入力したりします。これにより、営業担当者は事務作業から解放され、顧客との対話といったコア業務に集中できます。
- カスタマーサポート
製品マニュアルや過去の問い合わせ履歴(FAQ)を学習したAIエージェントが、顧客からの質問に24時間365日、自動で回答します。一次対応をAIエージェントに任せることで、オペレーターの負担を軽減し、より複雑で専門的な問い合わせに集中できる環境を整えます。
- 社内業務自動化
経費精算や勤怠管理、社内規定に関する問い合わせなど、バックオフィス部門の定型的な業務をAIエージェントが代行します。従業員はチャットで依頼するだけで各種申請が完了したり、必要な情報を即座に入手したりできるようになり、組織全体の生産性向上に繋がります。
開発費用・期間の目安と見積もり依頼のポイント
AIエージェントの開発費用と期間は、その目的や機能の複雑さによって大きく変動します。
開発費用・期間の目安
PoC(概念実証): 目的を限定し、基本的な機能を持つプロトタイプを開発するフェーズです。
- 費用: 数百万円〜1,000万円程度
- 期間: 2〜4ヶ月程度
本格開発: PoCの結果を踏まえ、全社展開などを視野に入れた本格的なシステムを開発するフェーズです。
- 費用: 1,000万円〜数千万円以上
- 期間:半年〜1年以上
これはあくまで一般的な目安であり、連携するシステムの数や、求められるセキュリティレベルによって費用や期間は大きく変わります。
見積もり依頼で失敗しないためのポイント
開発会社に正確な見積もりを依頼するためには、以下の点を事前に整理しておくことが重要です。
- 目的とゴールを明確にする: 「何を解決したいのか」「どのような状態を目指すのか」を具体的に伝えます。
- 業務要件を整理する: AIエージェントに任せたい業務の範囲や具体的な作業手順を洗い出しておきます。
- 利用するデータやシステムを明確にする: RAGで参照させたい社内ドキュメントや、APIで連携したい外部システムをリストアップしておきます。
これらの情報が具体的であるほど、開発会社はより精度の高い見積もりと、実現可能な開発プランを提案することができます。
AIエージェント開発ならEQUESにご相談ください

AIエージェントの開発は、ビジネスに大きな変革をもたらす可能性を秘めていますが、その成功には高度な専門知識と開発ノウハウが不可欠です。
弊社、株式会社EQUESは、AIを用いた「伴走型技術開発」で、AI導入を目指す多くの企業様をご支援してまいりました。東京大学松尾研究所発のベンチャーとして、特に製薬分野をはじめとする専門領域で高い技術力を発揮しています。
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まとめ
今回の記事では、AIエージェント開発の全体像について、その基本から具体的な開発プロセス、費用感までを網羅的に解説しました。
- AIエージェントとは、人間の指示に基づき、自律的に思考・行動するAIのこと。
- LLM、RAG、API連携といった技術がその中核を担っている。
- 開発は「企画→設計→開発→テスト→運用」のステップで進められる。
- 費用や期間は要件によって大きく変動するため、目的の明確化が重要。
AIエージェントは、もはや未来の技術ではなく、ビジネスの現場で具体的な成果を生み出すための現実的な選択肢となっています。この記事が、貴社におけるAI活用の可能性を広げる一助となれば幸いです。