企業AI入門|導入状況・メリット・活用事例までわかりやすく解説

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「AIに興味はあるけれど、何から手をつければいいかわからない」
「他社がどう使っているのか、導入の効果はあるのか知りたい」

そんな企業担当者の声が増えています。ChatGPTやGeminiなど、話題のAIツールが続々と登場する中、AIは業務改善や新規事業の可能性を広げる手段として注目されています。

本記事では、企業におけるAI導入の現状や導入メリット、業界別の活用事例、そして無料で試せるツールの活用法までをわかりやすく解説。
最後には、AI導入を支援するサービスも紹介します。

この記事を読むことで、以下のようなことがわかるようになります:

  • 日本企業におけるAI導入の現状と課題
  • AI導入によって得られる具体的なメリット
  • 自社に合ったAI活用の方向性を考えるヒント
  • 無料で始められるツールや導入支援サービス

まずはAIに触れ、自社での活用イメージを持つことから始めましょう。

日本企業におけるAI導入の現状

日本企業でもAIの導入は年々進んでいます。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)によると、「AIをすでに導入済み」の企業は約4.5割、「導入を検討中」の企業は約3.4割にのぼるというデータもあります。

とはいえ、実際に業務レベルでAIを活用している企業はまだ一部。特に中小企業では「ノウハウ不足」や「費用への不安」から導入が進んでいないケースが多いのが現状です。

また、導入が進んでいる業務は「マーケティング」「カスタマーサポート」「製造の自動化」など限定的で、まだまだ余地があります。

日本のAI産業は技術力のポテンシャルは高い一方で、実用フェーズへの移行が課題。
だからこそ、いま小さくAIに触れ、現場での活用を模索することが、他社との差をつける第一歩となります。

日本企業にAI導入が求められる理由とは?

経済産業省の「未来人材ビジョン」によると、2030年には640万人ほどの労働力が不足すると予測されています。

少子高齢化による人手不足、働き方改革、業務の効率化――
日本企業が直面しているこれらの課題に対して、AIは有力な解決手段となります。

特に、定型業務の自動化やデータ分析による意思決定の高度化は、あらゆる業界でニーズが高まっている分野です。
さらに、競争が激しい市場においては、「AIを活用しているかどうか」が生産性や利益の差にも直結し始めています。

海外企業ではすでにAI活用が当たり前になりつつあり、国内でも取り残されないための”先手”としてのAI導入が求められています。

つまり、AIは一部のIT企業だけの話ではなく、あらゆる業種・職種にとって「必要な選択肢」になりつつあるのです。

AI導入による企業メリット

AIを導入することで、企業は業務効率の向上だけでなく、競争力の強化や新たな価値創出にもつなげることができます。具体的なメリットは以下の通りです。

(1) 業務の自動化による効率化・コスト削減

定型業務やルーティン作業をAIに任せることで、人手をかけずにスピーディーな処理が可能に。人件費やミスの削減にもつながります。

(2) データに基づいた意思決定の精度向上

顧客データや業務データをAIで分析することで、感覚ではなく根拠に基づいた判断ができるようになります。

(3) 顧客満足度の向上

チャットボットやレコメンドAIなどを活用すれば、顧客一人ひとりに合わせた対応や提案が可能に。結果的に売上アップにもつながります。

(4) 社員の創造的な業務へのシフト

AIが単純作業を代替することで、社員はよりクリエイティブな業務に集中できるようになります。働きがいの向上にも貢献します。

業界別|企業におけるAI導入事例

AIの活用はすでにさまざまな業界で始まっており、業務効率化やサービス向上に貢献しています。ここでは代表的な業界ごとに、実際の導入事例を紹介します。

1.小売業|AIを用いた需要の予測

大丸東京店のベーカリー部門では、2023年2月に需要予測AIを導入。実証3ヶ月で売上が前年同期比約67%増加食品ロスも約40万円分削減されました。

特筆すべきは、推進メンバーの多くがIT初心者だったこと。現場への丁寧な関与と継続的な取り組みで、大きな成果を実現しました。これは「専門知識がなくても現場主導でAI導入は可能」である好例です。

(出典:日経クロステック)。

2.インフラ|AI音声認識による対応品質向上と業務時間の大幅削減

東京ガスでは、AI音声認識を活用したカスタマーサポート支援システムを導入。通話内容をリアルタイムでテキスト化・分析し、オペレーターに最適な応対やFAQを即時提示します。

この仕組みにより、年間約1万1000時間の業務削減を達成。生成AIの支援で新人教育の負担も軽減され、対応品質の安定化にもつながりました。

(出典:東京ガストピックス

3.畜産業|AIとローカル5Gで肥育効率向上と人手不足解消

鹿児島県のうしの中山(大隈ファーム)では、AIカメラ・見回りロボット・分娩監視などを導入。異常牛による緊急出荷・死亡を38%削減し、分娩事故も2.4%まで低下

さらに出荷時期の最適化で肥育期間を約1カ月短縮(約16%の牛)。出荷・導入作業も約3割削減され、人手不足にも対応しています。

(出典:総務省

4. 建設業|業務関連の情報を検索、質問するための独自のAIを導入

鹿島建設は、国内外のグループ企業を含むおよそ2万人の従業員を対象に、独自に開発した対話型AIシステム「Kajima ChatAI」を導入しました。

このAIの導入によって、従業員が社内の情報に一瞬でアクセスできるようになり、また初心者では1日かかるようなコーディングの作業が数十秒でできるようになりました。

また「Kajima ChatAI」は、社内限定の安全なネットワーク環境で稼働し、外部への情報漏洩リスクを抑えています

鹿島建設ホームページ 当社グループ専用対話型AI「Kajima ChatAI」より)

5. 製薬|AI活用によるQA業務の効率化システムを開発

万協製薬は、弊社EQUESと共同で、AIを用いて品質保証(QA)業務に関する書類作成を自動化するシステムを開発しました。
実証実験の結果、変更申請書の作成時間が32分から15分に、QAレビュー時間は38分から11分へと短縮されるなど、業務の大幅な効率化が確認されています。

万協製薬・EQUES 共同開発資料 「製薬会社とAIスタートアップが共同開発」より)

無料で試せるAIツールと活用事例

AI導入を検討する企業にとって、「まずは試してみたい」「小規模な業務から始めたい」といったニーズは非常に多く見られます。そのような企業にとって、無料で利用できるAIツールはAI活用の第一歩として非常に有効です。本章では、実際に無料で使える主要なAIツールと、それらがどのように業務改善に貢献するかを具体的な活用事例とともに紹介します。

(1) ChatGPT:テキスト業務の自動化に最適

OpenAIが提供する「ChatGPT」は、自然言語での質問応答や文章生成が可能なAIチャットボットです。無料プランでも高度な対話能力を体験でき、多くの企業で以下のような用途に活用されています。

活用例:

  • カスタマーサポートの一次対応:よくある質問の自動回答や顧客対応の補助として活用
  • 文章の下書き作成:メール文や提案書、商品説明などのドラフト作成を効率化
  • 業務マニュアルの生成:社内資料やFAQの作成補助により、情報整理の手間を削減

ChatGPTは無料で簡単に始められるため、AI活用の導入ハードルを大きく下げてくれます。

(2) Notion AI:ドキュメント業務の効率化

ドキュメント管理ツール「Notion」に搭載されたAI機能は、議事録作成や文章の要約、文章の改善提案などに活用できます。Notion自体は基本無料で使えるため、AI機能の試用も容易です。

活用例:

  • 議事録の自動生成:打ち合わせメモを整理・要約して共有資料を効率的に作成
  • アイデアの整理:ブレスト内容をAIにまとめさせてチーム内共有を促進
  • ドキュメントの翻訳・要約:長文資料の読み込み・要点抽出の時間を短縮

テキスト処理を中心とした業務の負担軽減に貢献し、特にスタートアップや小規模チームでの導入が進んでいます。

(3) Canva AI:非デザイナーでも使える画像生成AI

Canvaは直感的な操作でデザインができるツールですが、最近では「Magic Design」や「テキストから画像生成」など、AIを活用した機能が追加され、無料プランでも試すことができます。

活用例:

  • プレゼン資料のデザイン生成:AIがレイアウトや配色を自動提案し、資料作成の手間を削減
  • SNS投稿用画像の自動作成:マーケティング素材をスピーディーに生成
  • 広告バナーの生成:簡単なキーワード入力だけで複数パターンを即座に作成

マーケティング部門や広報担当者にとって、専門知識なしで高品質なビジュアルを用意できる点が大きな魅力です。

その他の注目ツール

上記の他にも、以下のような無料で使えるAIツールが注目されています。これらのツールはそれぞれ異なる業務ニーズに応え、初期費用をかけずに導入・検証ができるため、AI導入のトライアルに最適です。

ツール名主な用途特徴
Tomeプレゼン資料の自動生成テキストを入力するだけでプレゼン資料を構成
Lookaロゴの自動生成業種やキーワードからロゴを提案
Krispノイズ除去・音声処理会議通話のノイズを自動で除去
Beautiful.aiスライドデザインの自動化論理構成に沿って資料を自動で整える

このように、無料で使えるAIツールは多岐にわたり、各業務部門での「小さなAI活用」から始めることが可能です。まずは実際に触れてみることで、自社にとって本当に有効な活用方法を見極めやすくなります。AI導入の第一歩として、これらの無料ツールを積極的に活用してみることをおすすめします。

AIを活用したサービスの紹介

企業がAIを導入するにあたっては、自社の目的や業務課題に応じた適切なサービスを選ぶことが成功の鍵となります。ここでは、国内外で利用できる代表的なAI活用サービスを、タイプ別に紹介します。

◆ カスタマイズ可能な生成AI支援サービス

QAI Generator
製薬業界の品質保証(QA)業務向けに開発されたAI文書生成ツール。省令対応の文書作成や部門間レビューを効率化し、専門性や社内ルールに合わせたカスタマイズも可能。業務レベルに応じた料金でフレキシブルに対応できるので導入ハードルは低め。
公式サイトはこちら

Nyle(ナイル)「生成AIコンサル」
ChatGPTを活用した業務改善を、戦略設計から実装まで支援。マーケティングやナレッジ共有の自動化に強み。

◆ AIベンダー・ツールのマッチング支援

アイスマイリー
数百社のAIツール・ベンダーから、目的に応じた最適なサービスを無料でマッチング。生成AIや画像解析、業務効率化など幅広い分野に対応。

AI Market(ストラテジット社)
AI導入を検討している企業とAIベンダーをつなぐ専門メディア。事例や費用感も掲載されており比較検討に便利。

◆ 高度な技術支援・実装力に強み

AVILEN(アヴィレン)
AI・データ分析の実装と人材育成を両立。社内研修やChatGPT活用の導入支援も可能。

Rist
京都大学発のベンチャー企業。製造業向けの画像解析AIに強み。不良品検出や外観検査など現場の課題に対応。

SIGNATE
AIコンペティション運営の実績を活かし、実用的なアルゴリズム構築に強み。高度なデータ活用支援が可能。

◆ 業務プロセス全体を支えるAIサービス

Aidemy(アイデミー)
AI人材育成と内製化支援に特化。eラーニングからプロジェクト伴走支援まで、幅広く対応。

FastLabel
アノテーション支援を中心に、AIモデル開発の前工程を効率化。大量のデータが必要な企業に最適。

◆ 海外発のAI活用支援ツール(参考)

DataRobot(米)
予測モデルの自動構築に強み。日本語対応も進んでおり、ビジネス部門でも使いやすい。

Hugging Face(米)
高性能なオープンソースAIモデルを提供。技術力のある企業向けの柔軟な開発基盤。

【迷った方へ】AI導入のプロに相談するという選択肢

AIに興味はあるものの、実際の導入がなかなか進まない──そんな企業は少なくありません。
社内リソースやノウハウが不足していたり、「どこから手を付ければよいか分からない」「自社業務に本当に活かせるのか不安」といった声も多く聞かれます。

こうした課題を抱える企業にとって、有効なのが外部のAI導入支援企業との連携です。
専門家の視点から現状を分析し、最適な導入ステップやPoC(概念実証)を提案してくれるため、手探りでの導入リスクを回避できます。

特に、以下のようなニーズを持つ企業には、早めの相談が有効です。

  • AIを導入したいが、どの業務に適しているか分からない
  • 社内にAIの知見や推進人材が不足している
  • ツール導入だけでなく、業務フローや人材教育まで支援してほしい
  • 小規模から試せるPoCやパイロット導入を検討している

弊社では、無料相談や初期診断のサービスを通じて、貴社に最適なAI活用の道筋をご提案しています。
まずはお気軽にご相談ください。

まとめ:今こそ企業がAIを活用すべき理由

本記事では、日本企業におけるAI導入の現状から始まり、導入メリット、活用事例、支援企業の紹介までを幅広く解説しました。

あらためて、企業がAI導入に取り組むべき理由は以下のとおりです:

  • 少子高齢化による人手不足への対応
  • 業務効率化・コスト削減の必要性
  • 競争力強化や顧客満足度向上のためのデータ活用
  • グローバル企業との差を埋めるDX推進の一環として

AIは決して「未来の技術」ではなく、いま使える、成果が出せる手段です。
特に最近は、初期コストを抑えて小さく始められるサービスも増えており、以前より導入ハードルは大きく下がっています。

AI導入は、早く始めた企業ほど多くのノウハウと競争優位を築いていく傾向にあります。
「まずは小さく試す」ことから始めてみませんか?

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